Youtube等では保険での資産運用は効率が良くないのでNGであるという主張が盛んにされています。
私もその意見には基本的に賛同していて、保障部分は掛け捨ての保険で担保して、資産運用は投資信託で行うべきと基本的には考えています。
一方で変額保険が優れているところもあり、どちらがお得になるかはその人の状況によります。この記事では考慮するべきポイントについて解説していきます。
節税効果を考えてお得に投資をしたい人は必見の記事です。
※シミュレーション記事を書きましたので追記します。
結論
投資観点だけでみても、特定口座で投資信託を買うよりも変額保険のほうがお得になるケースはある。
そのため、一概に変額保険がボッタクリであるということはできない。
ただし、NISAやiDeCoと比べると変額保険のお得度は劣るのでNISAやiDeCoにまだ加入していなければ変額保険や特定口座で投資信託を買うよりも先にそちらを検討するのがオススメ。
投資信託と変額保険の比較
iDeCoやNISAも含めて、保険での資産運用と投資信託での資産運用を比較してみます。
それぞれのメリット・デメリットは下記かなと思います。
(★が多いほどその項目の評価が高いことを意味しています。0~3の4段階評価です。)
変額保険 | 特定口座 | NISA | iDeCo | |
拠出時の優遇 | ★☆☆ | ☆☆☆ | ☆☆☆ | ★★★ |
受取時の優遇 | ★☆☆ | ☆☆☆ | ★★★ | ★★☆ |
かかる費用 (★が多いほど少ない) | ☆☆☆ | ★★★ | ★★★ | ★☆☆ |
流動性 | ★☆☆ | ★★★ | ★★★ | ☆☆☆ |
リバランスのしやすさ | ★★★ | ★★☆ | ★☆☆ | ★★★ |
考え方にもよると思いますが、流動性とリバランスのしやすさはどちらかというと優先度低い項目で、上3つは重要度が比較的高い項目かと思います。
それぞれ見ていきます。
拠出時の優遇
拠出時の優遇ではiDeCoが最強です。iDeCoでは拠出したお金が全額所得控除になります。
そのため、拠出した金額×(所得税率+10%)が戻ってきます。所得税率20%の人なら支払った金額の30%が年末調整で返ってきます。
これは6万円の投資信託を買うのに実質負担は4.2万円で済むということです。
NISAや通常の特定口座での投資信託購入では拠出時の優遇は特にありません。6万円払って6万円分の投資信託を買うイメージです。
保険での資産運用は生命保険料控除で拠出時の優遇を受けることができます。
計算式は若干複雑なのでここでは割愛しますが、所得税率20%の人が年間6万円の保険料を支払うと9800円が年末調整で戻ってきます。
6万円分の投資信託を買うのに実質負担は約5万円で済んでいるイメージです。
(※ただし保険ですので支払った全額分を投資に回せるわけではなくて、保険関係費などの保険会社への支払いが引かれた金額が投資に回ることになるのであくまでイメージです。かかる費用のところで後述します。)
所得税率と支払った保険料によって年末調整で戻ってくる金額は異なりますが、下記に早見表を作りました。
月払い保険料 | 所得税率5% | 所得税率10% | 所得税率20% |
---|---|---|---|
3000 | 3700 | 5100 | 7900 |
5000 | 4550 | 6300 | 9800 |
10000 | 4800 | 6800 | 10800 |
20000 | 4800 | 6800 | 10800 |
まとめると、拠出時の優遇は
iDeCo > 変額保険 > NISA = 特定口座となります
受取時の優遇
受け取り時の優遇が最も優れているのはNISAです。NISA口座で買ったものは全額非課税となります。投資で儲けた利益に対しては通常20%の税金がかかります。
この20%の税金を免除してあげようというのがNISA制度です。
一方でNISA口座ではない特定口座ではこの税金免除の優遇がないので、利益に対して20%の税金がかかります。
iDeCoと変額保険の受け取り時の優遇はやや複雑です。
iDeCoは60歳になった時点で一括で受け取るか年金として受け取るかを選びます。
60歳になった時点で一括で受け取る場合は退職所得という扱いになります。
退職所得は税制度として優遇されています。計算はやや複雑なので省きますが、iDeCoを30年続けていた場合、1500万円まで非課税となります。(元本部分も含む)
またそれを超えた分についても課税所得として計算されるのは2分の1された金額になります。
月23,000円の積立を年利5%で30年間続けた場合、約1900万円になりますが、
退職所得控除で1500万円まで非課税扱いになり、超過した400万円を2分の1した200万円のみが課税対象となります。
ただし、会社から退職金がある場合は要注意です。
会社からの退職金も当然退職所得扱いになるので、iDeCoと会社からの退職金を同じタイミングで受け取ると、退職所得として合算されてしまうため、課税対象となる部分が大きくなります。
iDeCoを60歳で受け取って、その5年後の65歳の時に会社からの退職金を受け取るということができれば、両方に退職所得控除をフルに使えるのでお得です。
それができない場合は金額にもよりますが一部を60歳時に受け取り、残りを年金として受け取る等で節税効果を最大化することができます。
このあたりは個々人の状況によるので一概には言えません。そのため、全額非課税になるNISAと比べると受け取り時の優遇は劣るかなと思います。
変額保険の場合は、一時金として受け取る場合は一時所得に、年金として受け取る場合は雑所得となります。
一時所得として受け取る場合も税優遇があり、得た利益の50万円までは非課税となります。
さらに50万円を超えた部分も全額課税所得になるのではなく、2分の1の金額が課税所得となります。
退職所得と違い何年保険を続けていても一律で50万円となるのでお得度は劣りますが、一律で利益の20%の税金が取られる特定口座の投資よりはお得かなと思います。
ただし保険期間が5年以内の保険商品は金融類似商品となり、投資と同じ税金がかかりますので注意が必要です。
まとめると、受け取り時の優遇は
NISA > iDeCo > 変額保険 > 特定口座となります。
かかる費用
かかる費用については、保障機能がついている変額保険が圧倒的に劣ります。
それぞれでかかる費用の明細は下記です。
変額保険 | 保険関係費 (信託報酬) |
特定口座 | 信託報酬 |
NISA | 信託報酬 |
iDeCo | 信託報酬 口座管理手数料 運営管理手数料 事務手数料 |
全て信託報酬はかかります。これは投資信託を通じて投資をしている以上避けられません。
信託報酬はemaxis slimシリーズ等を選べば最安0.1%程度で抑えることができます。
特定口座やNISA口座は信託報酬以外は特に費用がかからないので、かかる費用面からはお得度が高いです。(特定口座とNISA口座で違いはありません。)
一方、 変額保険では保険関係費というものがかかります。
これは変額保険が持っている保障機能をかかる費用+実質保険会社への報酬が含まれます。
保険の種類により保険関係費は異なります。ざっくり私が手計算したところによると、個人年金保険で12%~13%程度、終身保険で20%程度のところが多いかなと思います。
(ただし保険会社によっても異なるので参考程度です。)
10% 以上が持っていかれるのは投資という観点からはかなり大きなマイナスです。
これがYoutube等では変額保険がオススメされない理由となっています。
そのため、変額保険で運用するべきか自分で投資信託を買って運用するべきかは、保険関係費として持っていかれるマイナス分を、生命保険料控除と一時所得の税優遇のプラス分でカバーできるかというところが焦点になります。
これは別途詳しくシミュレーションします。
iDeCoでは信託報酬に加えて、事務手数料・口座管理手数料・運営管理手数料がかかります。
運営管理手数料はSBI証券や楽天証券等のネット系証券会社では0円となっています。
事務手数料と口座管理手数料は国民年金基金連合会と資産を保全している信託銀行に払うものなので、どの証券会社でiDeCoをやっていてもかかります。
事務手数料は口座作成時に2,829円(税込み)がかかります。口座作成時のみなので、1回きりの支払いです。
口座管理手数料は国民年金基金連合会と信託銀行への支払い分を合計して月171円がかかります。
iDeCoの拠出金額が23,000円だとすると0.74%が毎月取られていることになります。
保険関係費に比べれば全然マシですが、信託報酬が0.1%とかの水準なのと比較すると小さくはないなと言う感じでしょうか。
まとめると、かかる費用はNISAと特定口座が最も少なく、iDeCoがその次、最も費用がかかるのは変額保険となります。
流動性
基本的には投資は長期観点で実施して、すぐに売却しないのが良いと考えていますが、そうはいっても急にお金が必要になることはあるかと思います。
そのため、資産の流動性についても比較します。
資産の流動性で最も制限がかかるのは、iDeCoです。iDeCoに投資したお金は、60歳まで引き出すことができなくなります。
次に資産の流動性が低いのは変額保険です。変額保険は解約して解約返戻金を受け取ることはいつでもできますが、
短期間での解約の場合ペナルティーが発生するので、元本割れする可能性が高いです。
そのため、換金自体はできるが損をする可能性が高いため、流動性は低いと言えるかと思います。
特定口座やNISAの場合は、いつでも売却して換金することはできるため、流動性は高いかと思います。
ただし、投資なので一時的にマイナスになっている時に換金してしまうと、損が発生します。
そのため、投資に回すお金は余剰資金として、投資に回したお金を使わなければいけないという自体を防ぐことは重要だと思います。
リバランスのしやすさ
最後の観点はリバランスのしやすさです。
リバランスとは何かについて詳細は別記事で解説しますが、
簡単に言うと、株と債券を8:2で投資をしていった時に、株が好調で債券が低調だと資産割合が9:1になります。これを8:2の割合になるように株を売って債券を買い増すのがリバランスです。
途中で売らないほうがいいんじゃないの?という疑問もあると思いますが、リバランスすることによって高い時期に売って、安い時期に買うということが可能になります。
基本的には年に1回〜2回のりバランスをしたほうがより資産を増やせるということがわかっています。
リバランスのしやすさでいうと、iDeCoと変額保険がやりやすいです。
この2つは運用中に別のアセットあるいは投資信託に乗り換えてもその時点では課税されません。
一方で、NISAの場合、運用中の投資信託を売却して、違う投資信託を買い直す場合、非課税枠を消費してしまいます。
NISAは年間で非課税枠が決まっているため、リバランスで消費することはかなりもったいないです。
特定口座においても、運用中の投資信託を売却して、違う投資信託を買い直す場合、売却した時点で20%の税金がかかってしまうため、複利効果の観点からもったいないです。
どちらの場合も、リバランスがまったくできないわけではなくて、資産を売却せずに今後の購入割合を調整する形のリバランスは可能ですが、iDeCoや変額保険に比べるとリバランスがやりにくいのが欠点としてはあるかなと思います。
まとめ
iDeCo, NISA, 変額保険, 特定口座での運用それぞれについて比較してきました。
お得度でいうとiDeCoとNISAが群を抜いていると思います。
iDeCoとNISAをどちらが良いかについてはこちらの記事を御覧ください。
変額保険はiDeCoほどではないけど拠出時の優遇があり、NISAほどではないけど受け取り時の優遇もあるというiDeCoとNISAの特徴を弱くして両方持っている感じかなと思います。
そのため、iDeCoやNISAをまだ満額していない場合は変額保険よりも優先してそちらをやるべきかなと思います。
特定口座と変額保険を比較すると、特定口座は税優遇がない代わりに余計な費用もかからない構造となっています。一方変額保険は拠出時と受け取り時ともに少しの優遇がある代わりに、保険関係費という費用が追加でかかります。
そのため一概にどちらがお得ということはできません。
それでは面白くないので、実際にシミュレーションをしてどういう場合は変額保険がオススメなのか、逆にどういう場合は特定口座で投資信託を買うのが良いのかを比較していきたいと思います。
長くなってしまったので、シミュレーションについて別の記事で書いていきます。
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