以前ソニー生命変額個人年金について記事を書きました。
そこでの結論は下記でした。
生命保険料控除をうまく活用できる人かつ月額の投資額が小さい範囲で10年間運用を続ければ、インデックス投資を上回るリターンを期待することができる商品です。
基本的にはそのスタンスは変わっていないのですが、具体的にS&P500に投資するのとどちらが得なのかを検証していきます。
以前の記事はこちらです。
きっかけとしては、「ソニー変額個人年金の世界株式型は年利+11%で、インデックス投資よりも高いリターンが得られるのでオススメ」と発信している人がいて、
本当にそうなのか?と疑問に思い、検証してみました。
結論
ソニー生命の変額個人年金の年平均リターン+11%は嘘ではないが、直近のリターンではS&P500へのインデックス投資に劣る。
つまり、2000年前半ではソニー生命の変額個人年金の世界株式型は大きなリターンを得られていたが、直近ではS&P500を下回るリターンしか出せておらず、インデックス投資に勝るとは言い難い。
一方で、節税効果を考慮すれば、多少表面リターンで負けていたとしても、変額個人年金のほうが利回り(IRR)では上回るため、投資の選択肢としては十分にアリ。
ソニー生命の世界株式型のアクティブファンドが大きなリターンを出す可能性もあります。
ただ直近1年のリターンはインデックス投資にボロ負けしており、もう少し様子を見てからのほうがいいかなと個人的には思います。
ソニー生命の変額個人年金とS&P500の比較
税金考慮前の表面リターン比較
税金等を考慮しないリターンを比較します。
ソニー生命のパンフレットが2021年2月末時点を基準として掲載されているため、S&P500も同じ期間で比較します。
S&P500はS&P500に連動するETFであるSPYの価格を用いています。
ソニー生命 (世界株式型) | インデックス投資 (S&P500) | |
1999/5/1~ (世界株式型の設定来) | +11.49% | +5.12% |
直近10年 | +14.84% | +11.07% |
直近5年 | +11.98% | +14.47% |
直近1年 | +14.63% | +28.39% |
ソニー生命の世界株式型の設定来もしくは直近10年リターンでみればソニー生命世界株式型のアクティブファンドがS&P500のパッシブファンドを上回っていますが、
直近5年もしくは直近1年でみると、S&P500へのインデックス投資が運用成績で上回っています。
特に直近1年は大きな差が開いています。
ソニー生命の世界株式型は2000年代前半にうまい運用を行い、資産をかなり増やしたのかなと思います。一方直近のアクティブ運用はあまりうまくいっていない印象を受けます。
保険商品の節税効果
上記から純粋な騰落率だけで見ると、直近ではインデックス投資のほうが有利に見えます。
そこに保険の節税効果を踏まえてリターンを計算していきたいと思います。
以下では月に5000円掛けているとしてシミュレーションを行います。
保険商品の節税効果は主に2つです。
- 掛け金の生命保険料控除
- 受け取り時の一時所得控除
掛け金の生命保険料控除
細かい計算は省きますが、毎月5000円を掛けていた場合、所得税率が20%だと年末調整で9800円戻ってきます。
そのため、月額5000円を拠出していた場合、保険商品だと年間の支出額は50,200円(5000円×12ヶ月-9800円)になります。
普通のインデックス投資の場合は6万円です。(5000円×12ヶ月)
受け取り時の一時所得控除
保険商品は解約返戻金を受け取る際も税金の優遇があります。
積立保険の解約返戻金は税金計算上は一時所得として扱われますが、一時所得は50万円の特別控除があります。
つまり、保険商品の投資で儲かった分は50万円まで非課税ということです。
対して、NISAの口座ではない特定口座で投資を行った場合、投資で得た利益額に20%の税金がかかります。
税金を考慮した実質リターンの比較
上記の2点を考慮してソニー生命変額個人年金の世界株式型とS&P500へのインデックス投資の実質リターンの比較を行います。
表面リターンは下記表の直近5年平均のリターンを用います。(ソニー生命世界株式型は年平均+11.96%、S&P500は年平均リターン+14.47%が今後10年間続くと仮定する。)
ソニー生命 (世界株式型) | インデックス投資 (S&P500) | |
1999/5/1~ (世界株式型の設定来) | +11.49% | +5.12% |
直近10年 | +14.84% | +11.07% |
直近5年 | +11.98% | +14.47% |
直近1年 | +14.63% | +28.39% |
その他、ソニー生命の変額個人年金は保険関係費等の保険会社への支払い分が発生します。
これは私の手元の資料からざっくり計算して、運用額の12%ほど取られるとします。(他の年金保険でもこのくらいなので、妥当な数字かと思います。)
ソニー生命 (世界株式型) | インデックス投資 (S&P500) | |
a. 表面リターン | +11.98% | +14.47% |
b. 表面積立額* | 1,148,844 | 1,332,571 |
c. 保険関係費を差し引く | 1,010,983 | 1,332,571 |
d. 累計投資額(控除考慮前) (月5000円×10年間) | 600,000 | 600,000 |
e. 利益額 (c – d) | 410,983 | 732,571 |
f. かかる税金 | 0 ** | 146,514 |
g. 手取り額 (c – g) | 1,010,983 | 1,186,057 |
** 利益額が50万円以下のため、一時所得の特別控除で非課税
10年後の手取り額では、インデックス投資のほうが大きい結果となりました。
上記は一時所得の特別控除の節税は考慮していますが、生命保険料控除による節税効果は加味できていません。それも加味してIRRを計算します。
キャッシュフロー及び、IRRは下記です。
ソニー生命 (世界株式型) | インデックス投資 (S&P500) | |
1年目 | -50,200 | -60.000 |
2年目 | -50,200 | -60.000 |
3年目 | -50,200 | -60.000 |
4年目 | -50,200 | -60.000 |
5年目 | -50,200 | -60.000 |
6年目 | -50,200 | -60.000 |
7年目 | -50,200 | -60.000 |
8年目 | -50,200 | -60.000 |
9年目 | -50,200 | -60.000 |
10年目 | -50,200 | -60.000 |
11年目 | 1,010,983 | 1,186,057 |
IRR | 12.42% | 12.10% |
節税効果を加味したIRRではわずかにソニー生命のほうが勝ちとなりました。
多少表面リターンがインデックス投資に負けていたとしても、節税効果分でそれを取り戻すことができていることを示しています。
まとめ
ソニー生命の変額個人年金保険とS&P500へのインデックス投資、どちらのほうが良いかについて検証してきました。
直近の表面リターンではソニー生命の変額個人年金の世界株式型は、S&P500に対して劣っています。アクティブファンドですが、インデックスファンドに勝つことができていません。
一方で節税効果を考慮した実質リターンでは、良い勝負ができています。
すなわち、直近5年の表面リターンで3%ほどの差をつけられていますが、節税効果を考慮した実質リターンでは、変額個人年金のほうが僅かに買っています。
今後ソニー生命の世界株式型のアクティブファンドがうまくいって大きなリターンを得られる可能性も十分にありえると思います。
一方で、直近1年でみると、インデックスファンドのリターンに対して大きく劣後しており、この劣後が続くようであればインデックス投資のほうが圧倒的に高いリターンとなります。
上記から私個人としてはもう少し様子を見て、ソニー生命のアクティブファンドがどの程度復活してくるかを見て投資判断を下したいと思います。
また、この記事でのシミュレーションは月額5000円でフルに生命保険料控除や一時所得特別控除を使える想定で作っています。
そのため、月額の拠出金額をもっと多くしたいという人や他の保険で既に控除枠を使ってしまっているという人はインデックスファンドへの投資のほうが良いかと思います。
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