金融庁が直々にレバレッジ型ETFに注意喚起をしています。
内容としては、「レバレッジ型ETFは短期売買のためのもので中長期保有には不向き」だからそれをよくわかった上で投資せよ
という内容です。
直近のレバナスの盛り上がりは異常なものもあったかなと思うので、
注意喚起を行っていくのは良いことだと思います。
一方で、長期保有に本当に向かないのか?という疑問は湧いてきます。
今日はそこについて深堀りしていきます。
結論(私のスタンス)
色々意見はあると思いますが、
私はレバナスは長期保有で資産形成をすることに十分向いていると考えています。
その理由は、下記の2点です。
①理論上レバレッジはボックス相場で減価が発生するが、実際のデータを見るとレバナスは減価がほとんど発生していないため(レバレッジをかけることによる上がり幅のほうが大きい)
②長期で見ると、右肩上がりになってきたし、今後もそうなる可能性は高いと考えるため
金融庁の主張
金融庁ホームページより引用します。
(1)レバレッジ型・インバース型ETF・ETN(以下、レバETF等)とは、日経平均株価などの指数(原指標)の日々の変動率に、一定の倍数(2倍など)を乗じて算出されるレバレッジ型指標に連動するように設計された商品であり、以下のリスク特性があります。
① レバレッジ型指標は、2日以上の期間では、変動率が2倍とならないため、中長期的に価値が逓減する可能性が高いため長期保有に不向き
② レバETF等は、参照する指数・指標に連動させるため、先物取引を用いた運用を行っていることから、一般的に、先物取引コストを負担しているほか、先物取引の期限(限月)を乗り換える際に、リスクが生じる
https://www.fsa.go.jp/news/r2/shouken/20210630/20210630.html
長期保有には向いていないといっている理由は、
2日以上の期間では、変動率が2倍とならないため、中長期的に価値が逓減する可能性が高いため長期保有に不向き
と明確に書かれていますね。
また、その他気になる箇所として、
一般的に、先物取引コストを負担している
や
先物取引の期限(限月)を乗り換える際に、リスクが生じる
があります。
前者は記載の通りで、レバレッジ型投資信託が通常の投資信託と比べて信託報酬が高いことの一因となっています。
後者は主に商品先物(原油等)の話だと思われるので、レバナスには関係ないかと思います。
そのため、金融庁の主張に反論するには、
減価のリスクや高い信託報酬を考えても、長期で見ると価値が上がる可能性が高いから長期保有に向いているんだ
ということを示す必要があります。
データで検証
長期投資に向かない主な理由として挙げられている、
「2日以上の期間では、変動率が2倍とならないため、中長期的に価値が逓減する可能性が高いため長期保有に不向き」
ということがレバナスに当てはまるのかデータを見ていきます。
具体的には、原指標であるNASDAQ100が一定期間横ばいが続いて減価が起こっているかを見ていきます。
明確に減価が起こっていると言えるのは、
原指標であるNASDAQ100はプラスなのに2倍レバレッジのレバナスはマイナスになっているとき
です。
また、NASDAQ100のプラス幅の2倍以下のプラスしか出ていないときも多少の減価が発生していると言えます。
用いるデータ
データはYahoo financeを参照して1999年3月から2020年までのQQQのデータを基に作成しています。
QQQはNASDAQ100に連動する最もメジャーなETFです。
NASDAQ100の2倍レバレッジETFであるQLDはできたのが最近であるため、QQQの日々の値動きを2倍にして仮想QLDを作成しています。
年間での比較
まず年間単位で区切った時を見ていきます。
2011年は典型的に上げ下げを繰り返すボックス相場により減価が発生している事例です。
原指標は年間で+3%とプラスになっていますが、2倍レバレッジはその2倍の+6%とならずに、+0%しか伸びていません。
2005年、2006年、2007年、2015年も2011年ほどではないですが、減価が起こっています。
それぞれ原指標の2倍まで伸びずに、1.5倍〜1.6倍程度の伸びとなっています。
また2018年も減価が起こっています。この年は原指標であるNASDAQ100がマイナスで終わった珍しい年ですが、
原指標が▲2%なのに対して、2倍レバレッジの場合の減少幅は、倍以上の▲9%となっています。
上記のようにもちろん減価が起こっている年もありますが、
基本的には2倍レバレッジのほうは原指標2倍に近い増加率/減少率となっており、
気にするほどの減価が起こるのはレアケースだと考えています。
例えば、2007年も原指標が+17%に対して、2倍レバレッジは1.9倍の+31%となっているので、
減価は発生していますが、気にするほどではないと個人的には思います。
減価という観点から、「通常NASDAQ100ではなく、レバナスに投資して失敗した」となるのは、
2011年と2018年の2つくらいかと思います。
2011年は原指標のプラス幅より2倍レバレッジのプラス幅のほうが小さくなっており、
2018年は原指標のマイナス幅の4倍以上のマイナスとなってしまっています。
それ以外の年はさほど気にする必要はないでしょう。
レバレッジなし | 2倍レバレッジ | 倍率 | 減価発生 | |
1999年 | +86% | +217% | 2.54倍 | |
2000年 | ▲44% | ▲77% | 1.77倍 | |
2001年 | ▲25% | ▲58% | 2.31倍 | |
2002年 | ▲37% | ▲66% | 1.81倍 | |
2003年 | +43% | +93% | 2.16倍 | |
2004年 | +9% | +15% | 1.68倍 | ○ |
2005年 | +5% | +7% | 1.62倍 | ○ |
2006年 | +5% | +7% | 1.49倍 | ○ |
2007年 | +17% | +31% | 1.90倍 | |
2008年 | ▲38% | ▲68% | 1.76倍 | |
2009年 | +50% | +110% | 2.22倍 | |
2010年 | +19% | +37% | 1.92倍 | |
2011年 | +3% | +0% | 0.00倍 | ◎ |
2012年 | +18% | +36% | 2.00倍 | |
2013年 | +30% | +66% | 2.22倍 | |
2014年 | +18% | +36% | 2.03倍 | |
2015年 | +6% | +10% | 1.49倍 | ○ |
2016年 | +9% | +16% | 1.76倍 | |
2017年 | +33% | +74% | 2.27倍 | |
2018年 | ▲2% | ▲9% | 4.12倍 | ◎ |
2019年 | +40% | +90% | 2.27倍 | |
2020年 | +43% | +79% | 1.84倍 |
ちなみに減価が起こるのは、上げたり下げたりを繰り返している時だけで、連続して下げているときは減価は起こりません。
月単位での比較
月単位でも見てみました。
数が多いので集計表形式にします。
1999年3月〜2021年6月までの結果になります。
原指標の騰落率と比較した 2倍レバレッジの騰落率 | 発生回数 | 発生確率 |
0倍以下(マイナス) | 5 | 1.9% |
0〜1.5倍 | 10 | 3.7% |
1.5倍〜1.8倍 | 11 | 4.1% |
1.8倍〜2.0倍 | 89 | 33.3% |
2.0倍〜2.2倍 | 121 | 45.3% |
2.2倍〜2.5倍 | 24 | 9.0% |
2.5倍〜 | 7 | 2.6% |
色々言えることはありますが、
大体の月において、2倍レバレッジをかけた指標は原指標の1.8倍〜2.2倍に収まります。(約80%)
つまり、減価はほぼ発生していないということです。
今後の予想
とはいえ、直近のレバナスは絶好調すぎるというのは正直あると考えています。
大きく上げた後は、伸び悩むというのは過去もそうだったため、今後しばらくは思うより伸びないということは十分にあり得ると考えています。
2003年の大躍進のあとの2004年〜2006年の停滞
2012年〜2014年まで連続二桁成長をした後に、2015年と2016年の停滞
2022年からはそのような停滞が起こる可能性は高いですし、マイナスになる可能性もあり得ます。
その可能性は十分に認識した上でそれに耐えられるだけの金額に限定して投資をしましょう。
まとめ
金融庁のスタンスである、
「2日以上の期間では、変動率が2倍とならないため、中長期的に価値が逓減する可能性が高いため長期保有に不向き」
に対して、データの観点から本当にそうなのかを検証してきました。
検証の結果、気にするほどの減価が発生するのはレアケースなので、それほど長期保有においても減価を気にするほどはないというのが私の結論です。
とはいえ、レバレッジをかけたレバナスが通常のNASDAQ100と比較するとリスクが高いことは間違いないので、
自分のリスク許容度の範囲内で投資をしていくべきというのは金融庁や注意喚起されている皆様の言う通りかなと思います。
FIREを目指すためにレバナスを長期保有をすることは、目的と手段が一致しているので良い投資法だと個人的には思いますし、実際に継続していきたいと思います。
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